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AEDの正しい使い方|心肺停止時にAEDを使えば救命率が上がる

AEDの使い方、ご存知ですか?もし知らないなら、知っておいたほうがいいです。

私は、バドミントンの試合中に、突然バタンと倒れて心肺停止してしまった人を目の当たりにしたことがあります。救命やAEDに関する知識が皆無だった私は、ただ遠巻きに見守ることしかできず、自分の無力さを痛感しました。

その時の恐怖感は、時間が経過した今も鮮明に脳裏に焼き付いています。「万が一の時、救命に対する知識がなければ全く何もできない。」と、強く感じ、消防署普通救急救命講習を受けてきました。無料で受講することができます。(都道府県によるので要確認)

AEDの使い方を実践的に教えていただけた事は、非常に有益な経験となりました。少しでも多くの方にAEDの使い方や注意点を知ってほしいので、消防署普通救急救命講習の内容をシェアします

突然倒れて心肺停止状態に

呼吸も心拍も無い!

試合の最中、中高年の男性がヨロヨロと数メートルよろめき、バタンと床に倒れました。倒れた時に頭を殴打したのか、赤い打撲痕が鮮明に見えました。男性は、うつぶせになって痙攣を起こし、意識不明になりました。幸い、看護師の女性がその場に居合わせたため、心拍が無いこと、呼吸が無い事を確認した後、すぐに心臓マッサージと人工呼吸を開始。

呼吸・心拍ともになかなか戻りません。すぐさま、看護師の女性はAEDを使用しました。しかし心臓の鼓動が戻りません。AEDの機械的なアナウンスが響き渡る蒸し暑い体育館の中、何もできず遠巻きに見守るしかない人々。

10分ほど経過したでしょうか、救急車のサイレンが聞こえ、慌ただしく救急隊員が体育館に入ってきました。すぐさま、救急隊員によるAEDを使った蘇生処置が始まりました。

死戦期呼吸

「体から離れてください」という機械的なAEDの音声。私達周囲の人間は、ただ見守り、祈るしかできませんでした。

男性は心臓マッサージを続けられていました。男性はずっと目を閉じたままでした。

一度、息を吐き出す音が聞こえました。(後から学びましたが、この呼吸は「死戦期呼吸」というそうです)

知識の無い人からすれば、「呼吸が戻った!」と勘違いすることが多いといわれる死戦期呼吸。これは、心肺が停止し、死に直面している人の特徴的な呼吸だそうです。実際には呼吸ではなく、単に「横隔膜がけいれん」しているのだそう。

救急隊員はAEDでの措置を繰り返しましたが、意識も心拍も戻りません。男性は酸素マスクを付けられ、担架で救急車へ搬送されました。

心肺停止とAED

心肺停止とは、意識(反応)なし、呼吸なし、循環(脈)なしの状態のことを指す、最も重篤で緊急度の高い病態のことです。

急変による心肺停止の原因は、ほとんどが急性心筋梗塞直後の心室細動。心肺停止に対する救命措置は、電気ショック(AED)の使用が必須となり、心肺停止後、AEDで処置するまでの時間が経過すればすると、助かる確率が下がってしまいます。

AEDによる電気ショックまでの時間が1分遅れるごとに7~10%の救命率(社会復帰できる確率)が下がる

AEDが届くまでに、質の高い胸骨圧迫(心臓マッサージ)と人工呼吸を行えば、何もしない時に比べて2~3倍も救命率が上がることがわかっています。

今回のケースでは、看護師の女性がたまたま居合わせたため、迅速に質の高い応急処置が施されました。男性にとっては不幸中の幸いだったと思います。

今回は、館内の温度が高かったので「熱中症」が引き金になったのかもしれません。当日の湿度は95%を超えていたこともあり、熱中症を引き起こしやすい状況だったと思います。

急性心筋梗塞の発症の機序として既存の冠動脈動脈硬化病変に脱水により血液粘稠度が上昇し、血栓形成が促進され、そこにストレスによるplaque ruptureが生じ血栓閉塞を来すことが考えられる。

このため夏場にも心筋梗塞は多発し、特に熱中症の状態は心筋梗塞を引き起こしやすいと考えられる。

この血栓ができる部位が左主幹部や前下行枝起始部、右冠動脈中枢側といった冠動脈灌流域の大きな部位であれば心室細動、心室頻拍といった致死的な不整脈の出現頻度が高くなる。

心室細動、心室頻拍といった不整脈は心筋梗塞発症後1時間以内に生じる事が多く、まず最初の段階で鑑別とともに脳循環の維持が重要である。

熱中症との鑑別が困難であった急性心筋梗塞の2症例

後日、男性は一命をとりとめたと、周囲の噂で聞きました。私はまったく存じあげない方なのですが、一日も早い回復を心よりお祈り申し上げます。ほんとうに、良くなられていますように。

 

普通救命救急講習でAEDの使い方を学ぶ

今回の体験で、自分の知識の無さを思い知らされました。AEDの使い方に対する知識も全くありませんでしたので、消防署が無料で行っている「普通救命救急講習」を受講してきました。

以下、講習で習ったことを記載しておきます。

心肺停止しているかどうかの確認と胸骨圧迫

1.反応を見る

大丈夫ですか?
肩を叩きながら声をかける。
肩を叩いて意識を確認する時は、右・左、両方たたく!
なぜ右・左、両方の肩を叩く必要があるかというと、片方が麻痺している可能性あるからです。

2.通報(119)とAEDの手配

周りの人に、

  • 119番お願いします!
  • AED持ってきて!

と声をかけます。周囲に声をかける時は、誰にお願いしているのか明確にわかる伝え方をする必要があります。

ピンクの服着たあなた!119番お願いします!

そこのメガネの身長150センチくらいの
アラレちゃんに似たあなた!
AED持ってきて!

など、明らかに「私に言ってるな。」とわかる様な伝え方をするのがベスト。

3.呼吸があるか確認する

お腹に手を当て、
10秒、呼吸があるか、確認!

これ大事!

これで、心肺停止かどうか判断できない場合は、心肺停止していると判断します。

4.胸骨圧迫(心臓マッサージ)をする

胸骨圧迫は、ミゾオチは絶対に押すな!

尖った骨が折れて肝臓に刺されば大量出血になる!

心臓を動かす、というより
脳に血流を!

  • 胸骨圧迫は、バテて辞めるな!
  • バテないように、救急車がくるまで、なんとしても胸骨圧迫の継続を!
  • 人工呼吸は、最大2回まで!
  • 息を勢いよく吹き込みすぎるのはダメ。胃に空気が入ったら、内容物が出てきてしまったり、なにかと面倒なことになる!

 

だから、人工呼吸は、
できないならしなくていい。

胸骨圧迫を優先!

心肺停止にはAEDを使う

AEDがきたら

自分が心肺停止の人に胸骨圧迫をしていると想定します。
AEDがきたら、持ってきてくれた人に、AED使えますか?
と聞いて、使えません!と答えられたら、

私の手の届く、ここに置いてください! という。

AEDを、そこに置いてください、だけだと、
離れた所にAEDを置き去る人がいるので注意!胸骨圧迫の手を止めないためにも、自分の手元にAEDを持ってきてもらうように。

AEDのパット装着

即座にAEDの電極パットを心肺停止している人の胸に装着します。

胸毛モジャモジャなら、
胸毛を剃る必要があります!

AEDの中に、カミソリあるかも!
剃刀があるなら剃る!

カミソリがないなら、電極パットが二枚あるか確認する。
電極パットが二枚ある場合は、そのうちの一枚を貼って、思い切り剥がして脱毛テープにする!

カミソリも、電極パットの予備も無いなら、仕方ないので、
心臓を挟む形で、胸毛の無い場所にパット貼る!

参考:AED使用時の注意点。体の濡れ、胸毛が濃い、ブラジャーや女性へ配慮等。

心電図の解析スタート

電極パットを張り付けて、心電図の解析を始めます。
ボタン押したら、AEDが勝手に解析をはじめます。

心停止の場合は、AED不要!とアナウンスがあります!
その場合は、AEDのパットつけたまま、胸骨圧迫を続ける!

 

  • 死戦期呼吸と、普通の呼吸を間違えない!
  • 死戦期呼吸は、心停止にいたる過程で現れる、単なる身体症状。呼吸が戻ったのではないのです!
  • 喘いだような呼吸しても、意識がなくて脈なかったら、そのあと心停止に必ずなるそうです!

救急車が到着したら

救急隊員に、自分が行った処置を報告します。

  • 何分くらい、何をしたか

とにかく詳しく報告します。

とくに、人工呼吸したかどうかは、忘れずに伝える!

救急車が来るまで、何もしないのと比べたら、何倍も救命率が上がります。救命率とは、社会復帰できる確率のことを指します。

何もしない場合と比べると、AEDを使うと何倍も救命率が上がり、もしAEDを使わなくても適切な胸骨圧迫すれば、何倍も救命率が上がるそうです。

あなたの目の前で倒れた人は、あなたが勇気を出すことで、社会復帰できる確率が、あがるのです!

胸骨圧迫で、肋骨を骨折させてしまうケースも多いそう。
しかし罪に問われることはほとんど無いとのことです!

勇気を出して救命処置を!

自分の目の前で人が突然倒れて意識不明、外傷や出血が見当たらない。

  • 呼吸してない!
  • なに?心臓?脳?
  • わからん!
  • どうする?

心臓発作なら、胸骨圧迫(心臓マッサージ)して良いかもしれないけど、
脳が原因なら、動かしてはいけないのでは?



いやいや、胸骨圧迫して、脳への血流をなんとしても確保!

脳が原因で心肺停止になるのは、脳幹?脳の大事な部分の損傷の時だけらしいです。その場合、体を動かすも動かさないも、そんなこと言っている暇は無い!

とにかく心臓止まってるなら、胸骨圧迫!そしてAEDを使う!

AEDは、止まった心臓を動かすための機械じゃなくて、おかしくなった脈や除細動(心臓のおかしな痙攣)を、判定して電気ショックで正常に戻すための機械。

AEDがあれば、必ず使う!

AEDを使って電気ショックを施したら、すぐさま、胸骨圧迫を継続する!AEDは、電極パットを張り付けて解析した後に、怖くて電気ショックのボタンを押せなかったら、(5分程度で)解除されてしまう。

そうなると、そのあと2時間くらいAEDは使えない。だから、そこまできたら、

やりましょう! 怖がらずに!

お住まいの場所によって違うと思いますが、普通救命救急講習は無料で行わているところが多いです。申し込みは電話やFAXで簡単にできると思いますので、ぜひ受講してAEDの正しい使い方を知っておきましょう!

おわりに

万が一の時のために、救急救命の知識は必要だと思います。

スポーツをしている人は特に、他人事ではありません。

※過去記事をリライトしました

 

==参考になる記事==

救命措置について、市消防局救急救命課の田中勝也課長補佐は「突然呼吸と心臓が止まってしまった人がいた場合、すぐに胸骨圧迫をするとともに119番とAEDの使用を始めてほしい。AEDはパッドをつけるまでどうしても多少の時間はかかるので、その間も胸骨圧迫をするのが望ましい。今回はAEDの使用を熟知した人がいて、素早い対応ができたことが功を奏したのだと思う」と話す。

引用:審判が心肺停止、体育館職員ら3人が命救う 大阪の消防署が感謝状|毎日新聞